2026.07.22レシピ紹介Bee myself
連載③ はちみつのある暮らしーBee myself〈June,2026〉
横浜から軽井沢に移住して1年余り。新しい環境下、手探りの生活が始まった。
行き着いた先が「はちみつのある暮らし」だった。
自然に恵まれた生活のひとこまを四季折々の風景とともにお届けします。
小諸なる古城のほとり
6月になっても冷え込むこともあり、長雨も多く、月末には台風に見舞われた。雨音を聞くのは嫌いではないが、何とはなしに心ふさぐ日が続いていた。離れて暮らす母が入院し、病院のある群馬県東部と軽井沢を行き来する日が続いたこともある。
小諸市にある温泉に足を向けたのも、そんな鬱々した気分を吹き飛ばしたい一心からだった。老舗旅館『中棚荘』に足を踏み入れると、宿泊客が出払ったあとで館内は静まり返っていた。小諸に7年間暮らした島崎藤村も通っていた温泉である。鳥のさえずりを聞きながら露天風呂につかっていると、身も心もほぐれていくようだった。
小諸城址の懐古園から千曲川をのぞめば、対岸の御牧ヶ原台地を覆う緑が光り輝いていた。茶屋で好物の甘酒と味噌おでんを腹におさめ、気がつけば心なしか足取りも軽くなり、束の間の遠足気分を愉しんでいる自分がいた。
梅雨空のもと、千ヶ滝温泉の先に軽井沢で3個所めとなる新しい養蜂場に向かった。ここは車や徒歩でアクセスしやすく、将来的に子供たちの課外学習や養蜂の仕事を広く知ってもらうための場としても活用していきたいと、代表の雨宮さんは話す。
梅雨時の作業は、ミツバチにとっても養蜂家にとっても歓迎されるものではない。天気が悪いとミツバチは人間に対して攻撃的になったりする。この日、雨宮さんは巣箱の中の産卵や成育の状況、貯蜜量、病気や異常の有無など確認する内検を行った。
元気な女王バチが産卵を続け、ミツバチが増え続けていれば問題はない。しかし、産卵能力に衰えが生じたり、何かのトラブルで女王バチがいなくなった時には対応が求められる。新女王バチの育成を促したり、別の群から新しく迎え入れたりして、女王バチの新旧交代を図らなければならない。
ロイヤルゼリーを与えて女王バチに育て上げるのはミツバチの役目だが、その土台となる環境づくりは養蜂家にしかできない大事な仕事である。
魅力的なローカルフード
地元の人に愛されるチーズ工房が佐久の御牧ヶ原にあると聞いて出かけてみた。「信州 チーズの樹」では、地域の農と食を豊かな魅力あるものにしたいとの想いを込め、チーズ職人の土屋宏樹さんがナチュラルチーズを製造販売する。
手塩にかけたチーズが並ぶショーケースを前に、土屋さん自らおいしい食べ方を種類別に提案してくれる。「美味しいはちみつに合わせるとしたら、どのチーズがいいですか」の質問に、太鼓判を押したのが「望-NOZOMI」だった。
なめらかな食感と爽やかでコクのあるフレッシュチーズ。そこにアカシアはちみつを添えれば、まろやかな酸味と上品な甘味が溶け合い至福そのもの。地元の原材料の良さをそのまま引き出す丁寧な製品づくりは、ハニープラントのはちみつ作りに通じるものがあり、味わい深さは相性の良さを物語っていた。
編集者兼ライター。ハニープラントで養蜂の手伝いをしながら、自然環境、地域産業、歴史文化を切り口に浅間山麓でのフィールド活動を行う。これまでJAL機内誌、JR東日本車内誌、日立製作所ほかのPR誌の編集に長年携わる。著書に『港で働く』『魚市場で働く』『通訳者・通訳ガイドになるには』(ぺりかん社刊)など。









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