2026.11.04Bee myself
連載⑦ はちみつのある暮らし-Bee myself〈October,2026〉
10月中旬、足をのばして白樺湖、霧ヶ峰方面に行ってみることにした。 
冬を前にした高原に華やかさはないものの、霧ヶ峰ハイキングの醍醐味は眺望の良さにある。
昔訪れたことのある「コロボックルヒュッテ」という山小屋の近くから、遠く浅間山を写真に収めた。
信州の豊かな自然に囲まれた生活のひとこまを、四季折々の風景とともにお届けします。
秋に思う、過ぎ去りし時間
2000年秋、山小屋の主人でありエッセイストとして活躍した手塚宗求(むねやす)さんを取材で訪ねたことがあった。10月の初め頃だったか。薪ストーブで暖められた部屋で、霧ヶ峰の自然や成り立ち、この地に伝承されてきた逸話など長い時間お話しいただいた。
手塚さんの温かい人柄と味わい深い文章が好きだった。その出会いが縁で、富山の氷見を一緒に旅したこともある。旅を終えて別れるときも「またお会いしましょう」と言葉を交わした。しかし、三度目はついに訪れなかった。
薪ストーブのぬくもりを初めて識った日からずいぶんと時間が経った。気がつけば、いま長野の山の中で薪ストーブの火を熾す自分がいる。
過日、軽井沢のレイクガーデンへ出かけた。ちょうど秋バラの見頃を迎えていた。色づいた木々の葉が風に舞い、落ち葉が小道を埋めていく。カサッコソ、カサッコソ。秋の午後の陽ざしはこんなに明るいのに、さみしい音色が私の後をついてくる。
無心に山で遊んでいた頃
冬を間近に控え養蜂の作業も残すところわずかとなった。雨宮さんは10月に入って巣箱の中が正常に保たれているか
をチェックする内部検査(内検)に追われていた。12月初旬には、ミツバチの巣箱を埼玉県寄居町の林の中に移す作業がある。
秋も深まってくると、空いた巣箱の洗浄作業や倉庫周辺の草刈り作業、埼玉越冬地での整地作業などもある。10月半ばに資材置き場となっている小諸の倉庫に出かけた。ここは年に数回草刈りに来ている場所だ。いまだ草刈り機はうまく使いこなせていないが、雨宮さんは笑顔で「だいぶ、すっきりしましたね」と言ってくれる。
森の中で雨宮さんと作業に汗を流し、冷たい水で喉を潤すひとときは、無心に山で遊んでいた子どもの頃に帰ったような心躍る時間なのであった。一方でこの1年間、日々ミツバチと向き合う養蜂作業において、私の手に負えないことがあることもわかった。できることを前向きにとらえることにしよう。
フレンチトーストに挑戦
フレンチトーストが好きだ。カフェやレストランでたまに食べる。レシピを調べると意外と簡単にできることを知った。自作のフレンチトーストには、パリのマロニエ通りにあやかりマロニエはちみつを合わせてみよう。砂糖は控えめにして、仕上げには上品でピュアなはちみつの甘さを生かしてみたい。
卵と牛乳とバターの醸す香ばしい匂いが食欲をそそる。マロニエはちみつは、厳密にいうと日本固有の橡(とち)の木の花蜜をミツバチたちが集めてきたもので、まさしく信州の山の恵み。ドリンクには、はちみつティーソーダを添えてみた。これで栄養たっぷりのご馳走も後味さっぱり。一度はトライしてほしい朝食メニューです。
Text&Photo 鑓田浩章(やりた・ひろあき)
編集者兼ライター。ハニープラントで養蜂の手伝いをしながら、自然環境、地域産業、歴史文化を切り口に浅間山麓でのフィールド活動を行う。上智大学文学部新聞学科を卒業後、JAL機内誌、JR東日本車内誌、日立製作所ほかのPR誌の編集に長年携わる。著書に『港で働く』『魚市場で働く』『通訳者・通訳ガイドになるには』(ぺりかん社刊)など。









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